吸血鬼の翼
ソウヒは買い出しをしてくると言って町へ下りていった。
それを見送ってから、ベンチに横になってたラゼキは軽い眠りに就いていた。
何処か寂しいこの礼拝堂の周辺には優しい風がそよそよと吹く。
それだけが、今の彼の苛立ちを抑えてくれている。
─ただ、腹を立てているだけでは、何の解決にもならない。
少し、頭を冷やした方が良いのだと自分自身に言い聞かせているのだ。
開いている史学書を顔に付けて両手は後頭部にやり、瞼を閉じると次第に熟睡していった。
イルトはそんな彼を礼拝堂の窓から申し訳なさそうに見ていた。
何も話せない自分が情けない。
彼の心配も無駄にしてしまって本当に何て言えばいいのか分からない。
それは彼だけじゃなく、ソウヒやルイノにも気を遣わせてしまっている。
自分でも、この胸騒ぎが何なのか手探りの状態で、どういう風に説明すれば良いのか適切な言葉が思い浮かばなかった。
「早く何とかしなきゃな…」
誰も居ない礼拝堂でイルトの声が静かに消える様に響く。
イルトが礼拝堂を立ち去るのと同時に、新緑色の髪をした少年がラゼキの眠るベンチの所まで足を踏み入れた。