吸血鬼の翼



それ故に、ルイノの近くにいるあの吸血鬼が疎ましい。
ルイノのあの優しい笑顔をアイツは当たり前の様に毎日、見ている。
それが、とても腹立だしい。
その光景を傍で見るのは耐えられない。
我侭を言っている事も承知の上でこの丘の家で暮らす事を断った。
未だにムカつくし、仲良くするつもりなんて毛頭ない。
―けど、今のアイツは。

「ルイノ」

「何?」

イクシスはいつもと同じ様に眠そうな表情でルイノを見上げる。
ルイノはイクシスと同じ様にしゃがみこんで、視線を合わせた。

「……早く、あの事件、解決出来ると良いね。」

「そうだね。」

早く、消失事件が解決して、またこの町も活気に満ち溢れ、皆元気になれば良い。

ラゼキ達の蟠(わだかま)りもなくなっていつもの彼等らしく戻ってくれれば良い。

そして、不愉快だけれど。
この人の為ならば―。

「…早く、元気になれ、あのバカ。」

イクシスは俯きながら、小さな声で届く筈のない相手に送った。ルイノは聞き取れなかったみたいで首を傾けている。

その時、再び書庫の扉が勢い良く開いた。
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