吸血鬼の翼
* * *
書庫の扉を開く音がして、その方角を見ると新緑の髪の少年がそこに立っていた。
「こんにちは、イクシス、久しぶりだね。」
イクシスは目を細めて微笑むルイノに静かに頷いてみせた。
この少年は週に3回くらいは通っているのだろうが、ここの所、顔を合わせてなかったので妙に懐かしい気持ちになった。
「…元気だった?」
イクシスはニッコリと笑って、書庫の扉を静かに閉め、ルイノの居る書架まで足を進める。
イクシスが此処へ来るのは、半分はこの司祭が居るからで、ミサ等は二の次だった。
だが、最近はルイノがこの書庫へ入り浸っているので来ていても会えずにいた。
否、正確に言うと会おうと思えば会えたのだが、ルイノの邪魔になるという気持ちもあって会わずにいたのだ。
今日、ルイノの居る書庫に来たのは、そろそろ頃合いだと思ったから。
「元気だったよ、イクシスは変わりない?」
「…ダイジョウブ。」
ルイノの隣まで来ると、イクシスはその場にしゃがみこむ。
ルイノは手にしていた本を書架に戻すとイクシスの頭を軽く撫でる。
「ごめんね。」
唐突なルイノの謝罪にイクシスは会えなかった事なのだろうと悟り、鷹揚に首を左右に振る。
会えるだけで、嬉しいのだからイクシスはそれだけで充分だった。
こうして、傍にいるだけで満たされる。
ルイノは沢山の喜びと生きる意味をオレに教えてくれた。
親戚中からたらい回しされてたオレに自ら引き取ると言って手を引っ張ってくれた。
―混血児の自分に分け隔てなく接してくれる。
反発しても、無気力でいても、ただ見守ってくれてた。
今もこうして、微笑んでくれる。
悪い事をすれば、ちゃんと叱って貰えた。嬉しかった。