吸血鬼の翼


「ソウヒっ」

開けたままの書庫の扉を支えにするように1人の少女がそこに居る。
振り返るとソウヒは満面の笑みを浮かべ、その少女に近寄った。

「おおっリリア!丁度良いところにっ」

「今日は千客万来だね。」

客足の絶えない状況に思わず、ルイノは苦笑を漏らした。
イクシスは2人の様子等、興味なさそうに黙ってルイノの横に並んでいる。

「ソウヒのバカっ!」

「へいへい、そんなに怒んなよ。」

先程、止めたのにそれを聞かずに走り出した彼に一喝する。普通なら吃驚するだろうが、もう慣れているソウヒには無効だった。
リリアは呆れて溜め息を吐くと不意にルイノの姿が目に入る。
リリアは直ぐに用件を思い出すと勢い良く、ソウヒを突き飛ばした。

「そうだっ神父様!」

「うん?」

ルイノは少し興奮しているリリアを宥める様に両手を自分の前にやる。
リリアは我に返り、落ち着くとゆっくりと口を開いた。

「概ね、ソウヒからお聞きになったと思いますけど、何か他に聞きたい事はありませんか?」

リリアの黒曜の瞳は必死にルイノを見つめていた。
それに対して、ルイノはニッコリと微笑みながら、彼女の頭を優しく撫でる。

「…じゃあ、団体かそうじゃなかったとか、髪と瞳の色、どんな感じだったか教えてくれないかな。」

「はいっ」

ルイノの持ち前の穏やかさにリリアは少し安心して、頷く。
そして、先程会ったという軍人について語り始めた。


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