吸血鬼の翼


リリアの話によれば、その“軍人”らしき者は単独で動いてる様子だったらしい。
町外れの森の入り口を横切ろうとしてその男は突然、後ろから現れ、リリアの首もとに短刀を当てて聞いて来た。
しかし、青ざめていたリリアは知らないとだけ答え、隙をみてその男から一目散に逃げてきた様だ。

「……大変だったね。」

ルイノはその時を思い出したのだろうリリアの震える肩を軽く叩き、宥める。
ソウヒはそれを見て、深い溜め息を吐く。

「…で、ソイツはどんな奴だった?」

リリアが落ち着いたのを見計らい、ソウヒは重い口を開いた。

「…鋭そうな水色の瞳で灰色の髪、凍り付くような雰囲気を持ってて怖かった。」

「それって…!」

リリアがその男の特徴を上げるとルイノは心当たりがあるのか目を見開く。
ソウヒも何か知っている様子で驚いた表情を浮かべている。

「神父様、何かご存知なんですか?」

「……ルイノ?」

リリアとイクシスの視線と疑問は一気にルイノに向けられる。

―黒い服に短刀、灰色の髪と水色の瞳。

リリアのその男について上げた特徴をもう一度丁寧に反芻する。
それに行き着いたのは1人だけ。

「………クラウ、だな。」

黙っていたルイノにソウヒは確信したのだろうその者の名前を口に出す。
ルイノは新緑の瞳をソウヒに向け、口にはせず静かに頷いた。


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