Is you is or is you ain't my baby?

北大路柾×波田小梅

外国のジャズが流れているこの喫茶店は、小梅のお気に入りの場所だ。

そこでブラックコーヒーを飲みながら文庫本を読むのは至福の時である。

今日はある“約束”をしていた。

カランコロンとドアの方からベルが聞こえたのと同時に、
「やあ、こんにちは」

その声が隣から聞こえたので、小梅は視線を向けた。

黒髪に眼鏡をかけた男が目の前にいた。

「こんにちは。

えーっと、マッサン…だったかな?」

そう言った小梅に、
「覚えていてくれたんだね、ライター」

北大路は笑うと、グレーのマフラーを外した。

「おや?」

北大路が何かに気づいた。

「着物を着ているけど、どこかへ出かけるのかい?」

今日の小梅の格好は白地に赤い梅の着物だった。
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