奇聞録
オフィスビルからの眺めは最高なのに、部長は決まって右はじのブラインドは開けない。
盛り塩が在るのも気になる。
理由を聞くと決まって口ごもる。
ただ、絶対に開けたり、興味本意で覗いたりしないことだと言われる。
深夜、残業の時、堪りかねた私はブラインドを開ける。
何も起きないではないか。
案外、いい加減な怪談じみたオマジナイなのかもしれない。
帰宅するのにエレベーターを待つ。
下から上がってくるエレベーター。
私の待つ階で止まる。
ドアが開くと、中に防空頭巾を被った女が幼い子供を抱いている。
衣服が焼ける臭いが、エレベーターに充満していた。
女は私には目もくれず、私のオフィスに向かい歩いていった。
こんな時間に不自然だが、私は疲れている。
何も考えずにエレベーターに乗り込み、一階へ降りる。
一階についてエレベーターのドアが開く。
焼けた衣類の臭い。
あの防空頭巾の女が立っていた。
慌ててエレベーターを降りると、女はエレベーターに乗り込み、私のオフィスの階まで上がって止まる。
ビルの警備に話す。
「・・・。開けましたね。」
と、一言。
訳もわからず、ビルから出ると目の前に人が飛び降りて来た。
慌てて駆け寄ると、焼けただれた肉の臭いと、衣類の臭い。
あの女と子供だった。
すぐに立ち上がり、飛び降りて来た女はビルへ入っていく。
翌朝、余りにも気分がすぐれず会社を休むと電話をいれると、部長に電話越しに怒鳴られた。
「お前!開けたな!お陰で社内は大騒ぎだ!防空頭巾の親子が、俺達の部屋から飛び降りるようになっちまったじゃねぇか!!」
私はそれ以来、その会社を辞めた。


