イジワル同期とルームシェア!?
でも、入社してすぐに努くんに恋したのは私だ。
「新人のうちは恋愛にうつつを抜かす気はない」と言い張る努くんを、8ヶ月かけて口説いたのは私の方なのだ。


最寄り駅に到着する。徒歩7分の道はどちらともなく手を繋いで歩いた。


「後輩のグチ、聞けた?」


努くんが不意に口を開く。今日、渡辺たちと飲むことは言ってあった。


「うん。だいぶ渡辺が荒れてた。山口が連れて帰ってくれた」


「そっか、お疲れ」


「みんなが幸せになるなんて無理なのは知ってるけどさー」


なんだかものすごい疲労を感じる。無力感というか……。
私、友達の一大事に何ができたんだろう。
後輩ひとりもなだめらんないし。

私がポツリと言った言葉を努くんが拾い上げて答える。


「そう。だから、涼子はあまり気遣いしなくていい」


私は驚いて顔を上げた。


「気ィ遣ってばっかりなのは、努くんじゃない」


私みたいな面倒な奥さんに、恋が実ったばかりの御曹司に。

会社だって輸入仕入れを手掛ける海外営業部に在籍している。いつだって、先輩たちに囲まれて気遣いのできる後輩役を頑張ってるじゃない。

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