飴とノイズと君の声
[何から話せばいいか分かんないから、本当に始めから話す]


「うん」


[俺の両親、俺が小6の時に離婚したんだ。
それで、俺は親父に引き取られて、一年間二人で暮らしてた。
だけど、それから1年後に、再婚したんだ。親父より5歳年下の、女の人と。
その人は優しくて料理も上手くて、俺を本当の息子みたいに可愛がってくれてさ。
だから俺は、その人が母親になるのを、拒否することは無かった。
でもある日、俺が自分の部屋で寝てたら、物音がしてさ、目を覚ましたんだ。
そしたら、その人が、俺の近くにいた]


琳ちゃんさんの表情が強張っていくのが分かる。


[何してるんですかって聞いたら、起きちゃったんだ、っていつもみたいに優しく笑いながらそう言って、俺に、何度もキスしてきた]


「えっ...?」


けーちゃんさんは驚いたような表情で、琳ちゃんさんを見る。


[俺も驚いて、何するんですかって言ったら、その人が言ったんだ。
あなたのお父さんのことなんてどうでもいい。
私はあなたが好きなのって。
顔も声も体も、私の好みだって。
そう言って、俺に何度もキスをして、遂には口の中にまで。
その感覚が、離れないんだ。
その人の舌の感覚が、その人の熱い吐息が、その人のあの、表情が。
その人は俺の服まで脱がせようとして、俺は必死に逃げた。
ただただ、怖くて]
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