realize
「ほら、着いたよ!!」

私の手をひいて少し前を歩いていた翔大くんがくるりと振り返り、満面の笑みで私にそう言った。


「…着いたって……。」


着いた場所は大きな水槽が店じゅうに
迷路みたいに配置されてるアクアショップだった。


「知り合いが最近オープンさせたんだけど、
水族館みたいですっげー綺麗なの!!」


そういって私をその場に残し
翔大くんは店の奥の店員と笑いながら話し始めてしまった。


取り残された私は
近くの水槽に目をやった。


オープンしたばかりだからか
手入れのゆき届いた水槽に、
色とりどりの見たこともないような魚がゆらゆらと泳いでいた。


ブルーライトに照らされて、
水槽に注がれた空気がポコポコと水に揺らぎながら水中から空気中へと消えていく。



いつかもこんな光景を見たことがあった気がした。


いつだっただろう…

誰とだったろう…

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