realize
昨日は"アルバイト"の日で
いつものように終わると店に向かって
翔大くんへの報告をしようと店の扉に手をかけた瞬間、
いつもはしない人の会話のようなものが
耳に入った気がして手が止まってしまった。


薄暗い店内から微かに聞こえる声は
翔大くんと亜美香さんのものだった。


扉の硝子張りから見えたのは
翔大くんが亜美香さんの肩を支えるように
向かい合って話してる姿だった。


立ち聞きする気はなかったけれど
完全に入るタイミングを逃してしまっていた。


「…もう十分なんじゃない？」

「…そうかな…？」

「目的も十分達成してるじゃない、
これ以上続けても、…」

「……」

「…翔大のその態度、
付き合うきもないくせに、彼女…」

「そうだね、今日、由紀さんには俺から話すよ。」

「そうして、私もその方が安心するわ」


そういって翔大くんに微笑む亜美香さん、
そんな亜美香さんを同じように微笑み返し
一瞬だけぎゅっと抱き締めて何かを言ったのか
亜美香さんはもう一度翔大くんに微笑むと裏口の方から出ていった。


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