きみが死ぬまでそばにいる
 
 それから数日が過ぎた。

 自分の愚かしさに気づいたからといって、何かをするわけではない。今のわたしにできることは、過去の自分をただ嘆くこと。そこから学ぶことくらいだろう。

 もちろん、そんなに早く切り替えられるわけがない。それでもいつか、本当に過去にできる日が来る。そう信じるしかなかった。
 完全にやる気をなくしていた勉強も、また、真面目に取り組み始めた。怠けていた分を取り返すのは容易ではないけれど。

 ただ――部活だけは、まだ復帰する気にはなれなかった。新部長は、三原さんに決まったらしく、部の雰囲気も随分変わったとか。だけど陸が来ているのか、泉に聞く勇気がなかった。
 臆病なわたしは、その日も授業が終わると早々に帰路につく。

「管原紗己子さん、よね」

 声をかけられたのは、丁度校門を出たときだった。
 その人は、小綺麗な格好でブランド物のバッグを持って、わたしににっこり微笑んでみせた。

「覚えているかしら、一度家に遊びに来てくれたわよね。椎名陸の母です」

 唐突な来訪に、驚きを隠せなかった。それでも、この女を忘れるはずがない。

「ええ――もちろん。その節は……」
「つまらない挨拶なんていいのよ。単刀直入に言うわ」

 不意をつかれながらも、なんとか愛想笑いを浮かべたわたしの言葉を、陸の母親は容易く遮った。
 そして――一瞬にして牙を剥く。

「言いたいことは一つだけよ。陸とは別れてちょうだい。何故かは分かるでしょう?」
 
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