きみが死ぬまでそばにいる
 
 誰の目も気にせず父親に会える。医師や看護師聞かれたら、わたしの友達だと言えばよい、と渋る陸を説得する。
 それでも、陸は決して首を縦にはふらなかった。
 倒れた翌日、一緒に病院に行ってからずっとこうだ。もしかしたら、彼はもう父親には会わないつもりなのかもしれない。どういうつもりでそうしているのかは、分からないけれど。

「先輩の気持ちはありがたいですけど、今は会うべきではないと思うんです。ただでさえ、家族ではないんだし……」

 陸から返ってくるのは、いつも曖昧な答え。なぜ自分の父親に会いたくないのか、その理由が分からない。
 本当に家族に遠慮しているのか。それとも別の何かなのか……聞いても陸はきっと答えない。
 わたしは、一緒に来て欲しいのに。

「分かったよ。もう誘わない、じゃあね」

 苛立ちを隠さず吐き捨てるように言うと、陸の返事も聞かずにバスに乗った。
 困惑したようにわたしを呼ぶ声も、全部無視して。
 
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