きみが死ぬまでそばにいる
 
「はい。一年二組の椎名陸っていいます。よろしくお願いします!」

 知っている。きみは知らないだろうけど。
 きみの父親も母親も、二人が何をしたかも。きみたちがわたしから何を盗んだかも。

 なのにきみは何も知らない。知らないから、そんな綺麗な顔ができる。

 ずるいよね。卑怯だよね。
 だってわたしたち、半分は同じ血を引いているのに。

「わたしは、二年の菅原紗己子。今日はちょっと集まりが悪いけど、とりあえず入ってね」

 優しく言って陸を部室に招き入れる。
 そんなわたしは、甘言を囁いて誘い込む魔女のよう。

 だけど、きみが悪いんだよ?
 何も知らずに笑っているから。

 だから、きみも傷つけばいい。
 その時のきみの顔を、きっと、そばで見ていてあげるから。
 
< 14 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop