俺達は愛という情を知らない

『愛を知らない同罪の者たち』




賑やかな教室。

 仲の良い生徒同士が他愛ない話で盛り上がっている中で、橘 志乃(タチバナ シノ)は一人。

窓際の席で窓越しに注がれる温かい日光を背に浴び、気持ち良さそうに眠っていた。

 しかし、近くで騒いでいた男子生徒が彼女の席にぶつかり、その反動で無理矢理に目を覚まされた。


「ごめん、たち――ひっ!?」


 男子生徒は振り返り、志乃の方を向いた途端。顔を青ざめ、間抜けな声が出した。


それもそのはず、わざとでなくとも起こされてしまい機嫌の悪い志乃が、男子生徒に今にも食ってかかってくるようなほど睨んでいるのだから――。


 すいませんでした、と腰を九十度ほど曲げて一方的な謝罪をして男子生徒は、その場を勢いよく逃げ去っていく。


その後を、彼の友人たちが慌てて追いかけて行った。



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