俺達は愛という情を知らない

(なんだったんだろうか?)


 無意識に相手を睨んでいたのか、そんなことを思う志乃に、さっきの騒ぎに気付いた人の会話が耳に入ってきた。


――また橘さんだよ、怖い。

――ぶつかって、相手が謝っているのに睨むって可笑しくない。

――橘さんって、何考えてるか分かんないよな。

――近寄りたくないよね。


(またか……)


 いつも纏わりつく周りの嫌味と好奇な目の数々に、嫌気が差すのを通り越し呆れていた。


 人はどうしてこうも、誰かを非難するのだろうか。よっぽど自分は完璧だ、と自信があるのだろうか。


実際にそう思っている人は自意識過剰だ。


 人は誰かを非難して虐めの的をつくらないと気が済まないし、煽られれば馬鹿みたいに便乗する。


そして、自分の思い通りに的にした人物が辛く悲しい思いをした時に、人は悪い快感を覚える。


 それが――虐めの始まり。


 一種の麻薬のようなものだ。




(くだらない……)


周りからの嫌みを都合よく、人の耳は遮断してくれないものかと僅かに苛立ちながら目をつむる。


寝てしまえば、耳も自然に遮断してくれるだろう。


今日はツイてる、だってこんなにも日が差していて温かいのだからすぐ眠れる。


また机に突っ伏し寝る姿勢にはいる彼女を、わざわざまたも起こす人なんていなかった。
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