自分勝手なさよなら
「そんなこと思ってません。」
初めて聞く強い口調で、内田くんは私の顔をまったく見ずに、そう言った。

そうこうしている間にお店に着く。
週末ということもあってお店は多くのサラリーマンで賑わっていた。
「亜希~!遅いよ~!!」
奥の方のテーブル席からもう少し寄っているのか寛子が大きな手振りをつけて私を呼んだ。
「亜希さん!お疲れさまでしたぁ」
後輩の真奈美もすっかり頬を染めている。
当然メンバーを知っていたのだろう。いつもはカジュアル一辺倒な真奈美だが、今日は愛らしいピンクのニットにスカートだ。

男性陣は、内田くんの他に、内田くんの同期の坂本くんと、一つ先輩の泉くんがいた。
坂本くんもなかなかのイケメンだし、泉くんはノリが良くて飲み会の人気者、といった面子だ。
泉くんは今も隣に座っている可奈をけらけらと笑わせている。

私のビールが届いたところで、当然、泉くんがまとめてくれた。
「それでは!村松亜希さんの誕生日を祝って!」
「かんぱーい!!」
誕生日直前のこの時間を内田くんと乾杯できることに、感謝しよう。

日頃、頑張ってるんだもん。
今日くらいは祝ってもらって主役気分を味わうの悪くない。
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