自分勝手なさよなら

理由になりそうなもの。

内田くんとはあれから、たまにLINEをする程度だ。

誕生日当日は秀雄と焼き肉を食べに行った。
私たちはよく、お互いに好きなプロ野球の話で盛り上がる。
会話の無いシーンをそれが救ってくれたりもする。
最初の出会いも、友達の紹介で、野球の話で盛り上がって連絡先を交換したりした。
もう何年前だろう。
5、6年前になるのか。
20代後半だった私は、バリバリ働いていて、結婚したいという気持ちはさほど無かったように思う。

24歳で最初の結婚ピークが来た。
地元の栃木に残った友人たちから結婚の報告を聞き、羨ましいどころか、正直勿体ないとさえ思った。
まだこれから何だってできるのに。
そう、私にはまだこれから何だってできる。

27歳を過ぎて私は知る。
私は何もできてない。
仕事や友人付き合いで忙しく過ぎる毎日。
残っているものは何だろう?
その時好きだった男と別れ、ふいに一人になった瞬間に孤独に襲われる夜もあった。
自分はこのままずっと一人なんじゃないか?

秀雄に出会ったのは29になったばかりの冬だった。
秀雄は最初から結婚を意識して、私と付き合いたいと言ってくれた。
初めての言葉に、私は純粋に嬉しかった。
私と結婚したいと思ってくれる人がいるんだ。
それに答えることに少しの迷いもなかった。

それなりの恋と失恋を経験してきた私は、
やっと落ち着けるんだって、そう思った。

落ち着きと、代わりに失ったもの。
そんなものあっただろうか?
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