自分勝手なさよなら

冬、罪悪感。

秋から冬の帰り道が私のいちばん好きな時間だった。
高校生ぐらいからずっと。
一日に起きた良いことと悪いことを思い出しながらブーツの踵を鳴らす。

ただ、今週はやたらため息が多い。
理由はわかっている。
誕生日が来週にせまっている。
もう、この歳になると誕生日なんて嬉しくもなんともない。
34歳。
子供の頃にイメージしていたそれとはかけ離れた今がある。
毎年それを痛いほど感じるのが誕生日だ。

幸い、秀雄は誕生日や記念日を率先して祝うようなタイプでは無かった。
「どこかに行きたい?」と聞かれたときも、「焼き肉食べたい」とだけ答えた。
もちろんプレゼント交換といったイベントも、もう何年もやっていない。

そういえば気を利かせた寛子から、飲み会を開くメールが来ていた。
寛子を初め、職場には同い年の飲み友達が何人かいる。
そういえば返事返してないや…っと。

『誕生日!飲むよ!お店はここ♪』
お店のURLまでついていた。
新橋の居酒屋が表示される。
お洒落なお店ではなく、赤提灯系なのがうれしい。

『ありがと!わかってるね寛子♪メンバーは?』
こうなりゃとことん飲んで34歳、祝ってもらおうじゃない。

『メンバーはいつもの女子四人+メンズだよ♪』
女子四人…と言うのは、私、寛子とバツイチシングルマザーの加奈と、後輩の真奈美だ。
メンズ?徳永課長かな?
それとも営業の主任?

『メンズってだれ?』
も返したものの、その日寛子からは返信がなかった。

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