明日はきっと晴れるから



お父さんは、容疑者男性の命を奪ってしまった。

それって……殺人になるの?

違うよね。お仕事上のことだもん。
人殺しなんかじゃないよね?

でも……人がひとり亡くなったのは事実で……。


亡くなってしまった人のことは、男性という以外教えてもらえなかった。


若い人なのかな……。

それとも、おじさんなのかな……。


その人には当然、家族がいて、

その人が亡くなったことに、家族は泣き崩れているのかな……。



お父さんのせいで命を落としてしまったという男性と、その家族のことを想像してしまい、

胸にナイフを突き立てられたような鋭い痛みを感じていた。


その人のこれからの人生を、私のお父さんが奪ってしまったんだ……。

その人の家族を、私のお父さんが泣かせているんだ……。


そう思うと、心が痛くて仕方ない。


小さくラジオが流れるタクシーの中で、「ごめん、なさい……」と無意識に呟いていた。


涙が溢れ出して、頬を伝ってポロポロと流れ落ちる。


それまで肩を落としていたお母さんが、慌てたように私の方を向いて、抱き寄せてくれた。



「菜乃花は謝らなくていいのよ。
ごめんね、菜乃花。お願い、泣かないで……」



慰められても涙の量は減るどころか、大粒の雨となって降り注ぎ、口からは勝手に嗚咽が漏れてしまう。



「うっ、ううっ……ごめ、なさ、い……」



ひとりの人が自分の父親のせいで亡くなったという事実を受け止めるには、私の心は弱すぎて、心が壊れてしまいそう。


お父さんに『お母さんのこと頼むな』って言われたのに……しっかりしなくちゃいけないのに……ダメみたい。



情けない私は、震えながら涙を流すしかできなかったーーーー。




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