素顔で最高の恋をしよう
5.すぐ先の幸せと、まだ先の幸せ

―――― 5. すぐ先の幸せと、まだ先の幸せ

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「葉月さん。これ、今度の予算内でプランを組んでみたんだけど、目を通してもらっていいかな?」

「……わかった」

 静かな口調で声をかけてきた架くんが、USBメモリーをポンと置いて去っていく。 
 あれから数日が経過したけれど、彼は何事もなかったかのように以前のまま変わらない。

 こちらとしても態度を急変されては困ってしまうので、“いつも通り”というのは、ありがたいのだが……それはそれでなんだかモヤモヤする。
 
 もしかして、あれは夢だったのだろうか。
 いや、あれが白昼夢だなんてありえない。

 今でも私ははっきりと覚えているのだから。……あの、やわらかな唇の感触を。

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