あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「ごめんなさい。すみません! ナンパとかそんなんじゃないんです!! この割引券、会社の人にもらったんですけど、一緒に行く相手がいなくて。男がひとりで行くと変でしょ? でも……都会のパンケーキがどんなもんなのか食べてみたいんです。あ、もちろんご馳走しますから」

 必死で取り繕うように言葉を羅列する男性を目にし、思わず笑いそうになってしまった。

 これはナンパではないのだ。都会のパンケーキがどんなものか興味があるだけのこと。それ以外、他意はない。
 たまたま通りがかった私が、なんとなく頼みやすそうだったとか、そんな理由だろう。

「今、ちょっと愛媛の方言が出かかってましたね。イントネーションが」

「……え?」

「私、父方の田舎が愛媛なんです」

「マジっすか?!」

 私の父が愛媛出身というだけで、私自身は違うのだけれど、同郷の仲間を見つけたみたいに、目の前の男性がうれしそうににっこりと微笑んだ。

「と、とりあえずパンケーキ食べましょ! このイチゴのソースが乗ったやつなんて、めっちゃうまそうですよ!」

 割引券に印刷されていた写真をまじまじと見つめ、彼がキラキラと目を輝かせる。
 無邪気にパンケーキに心を奪われているこの男性に私は負けてしまって、少しだけそのカフェに付き合うことにした。

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