あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 そんなモヤモヤが続く中、仕事を終えて駅へ向かう道すがら、葉月さんの後ろ姿を見つけた。
 遠くにいても、俺は一瞬で彼女だとわかった。

 だけど、瞬時にイライラした気持ちにさせられた。
 彼女はひとりではなく、男と一緒だったからだ。

 長身で猫背の男だが、あれは誰だ?

「葉月さんっ!!」

 気がついたら俺は大声で叫ぶように彼女の名前を口にしていた。
 一刻も早く彼女のもとへ行きたくて、全速力で走りだす。

 単純に嫌だったのだ。
 俺の知らないところで、他の男とどうにかなられたらたまらない。

 息を切らして走り、葉月さんの隣に辿り着いたとき、男の姿はもうなかった。

 だが俺は見てしまった。その男の去り際に、葉月さんがそっと腕に手を添えていたのを。


 ――― 触るな。
 
 男は単細胞な生物だから、()れられたら自分に気があると勘違いする。

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