あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 社長は私よりも十歳以上年齢が離れているというのに、なぜか話も感覚も私と合う。
 本当は地味で真面目なくせに、それを取り繕ろうように表面上は愛想よく振る舞う私と、自由奔放で心底明るく、お喋りな彼女とでは、その性格は正反対なのに。不思議としか言いようがない。

 なぜウマが合うのかわからないけれど、結局のところ私は彼女に憧れを抱いたのだと思う。 
 生き方を含め、こんなふうになれたら素敵だなと、私に無いものを持っている彼女を凄いと思ったし尊敬できた。

 私が彼女のようになれるわけがないのは、わかっている。
 地味な私が、いくら彼女の真似をして着飾ろうとしても無理だ。周りは引くだけだろう。

 だけど彼女と一緒に働きたいと思った。
 幸せなカップルの運命の出逢いをお手伝いする仕事を一緒にやりたい、と。

 そんな理由で、特に思い入れがなかった前の会社を辞めて、この小さな会社に転職した。


 ……杜村 凪子

 豊臣秀吉も真っ青なくらいの、人タラシだ。

< 8 / 273 >

この作品をシェア

pagetop