ガリ勉×メガネ=?
「誰かいるのか?」

 ドアの上部にある長方形の曇り硝子、その向こうの影が揺れるたびにドアが、けたたましい音を立てた。どうやらドアを開けようとしているらしい。しかし、レンがかけた鍵を外さない以上ドアは開かない。
 このままじゃふたりきりで、しかも鍵をかけていたのがバレてしまう。危機感に襲われた葉菜が胸をドキドキさせながら不安げにレンを見た。
 レンが苛々した様子で口の中で舌打ちした。辺りをぐるりと見回し、シャツの胸ポケットからメガネを出してかける。

「お前、そこから一番小さい定規をよこせ」

 なにに使うんだろうと思いつつも、窓の隣の小振りな机の上にあるペン立ての中から、小さい定規を取り出してレンに渡す。
 レンがすぐにドアに向かう。外の人物と同じようにドアをガタガタいわせながら、その音に紛れて気付かれないように鍵を外した。開いたドアから現れたのは神経質そうに眉間にしわを作った独身(35歳)の社会科の男の先生、国立だった。

「鍵を締めていたのか? 何をしていた?」

 苛立った表情が葉菜を見る。話しを聞かれたのか、キスしてたのがバレたのか、背筋がひやりとして口も聞けずに立ち尽くした。
 開いたドアの下にうずくまっていたレンが急に立ち上がる。

「取れました! これが挟まっていたからドアが渋かったんですね、きっと」

 人がよさそうな気弱な笑みを浮かべたレンが手に持っているのはさっき渡した定規。

「誰かがいたずらしたのでしょうか」

 首を傾げるレンはすっかり委員長に戻っていた。

「なんだ大滝か」

 ドアが渋かっただけで、ガリ勉オタクが女子とふたりでいたところでなんら問題がない。安堵のため息をついた先生が中へ入ってきた。
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