ガリ勉×メガネ=?
 メガネが外れた瞬間、委員長は辞書に伸ばしていた手を慌てて引っ込めて顔を覆う。その顔を見ようとしていた葉菜の頭に分厚い辞書が落ちてきた。

 ガス!
 
 嫌な音と共に、確かな衝撃が葉菜の頭を襲う。

「痛い……!」

 目の前にチカチカと星が飛び、ふらつきながら床の上に尻餅を付いてしまった。顔をしかめながら頭を抑える葉菜の上に、人の体重を感じて不審に思う。

「………?」

 まだチカチカする目を開けて、体重をかけるように自分を押し倒す相手を見やる。鋭い目つきの不機嫌そうな顔が上から葉菜を睨みつけるように見ている。髪はボサボサだが、その細長の輪郭、スッと通った鼻筋には見覚えがある。委員長意外に考えられない。見れば隅のほうにビン底メガネが落ちている。

「い、委員長……?」

 それでもつい、問いかけてしまう。
 だって、サラサラの黒髪はいかにも日本人っぽいのに、メガネを外したその瞳はマリンブルーの海を思わせる青―――。
 どうみてもハンサムな外人さんだよ。
 衝撃のあまりの大きさに、目を見張ったまま葉菜は動けないでいた。

「だからメガネを外すのはいやだったんだ」

 不機嫌そうにため息をつく、その声までも今までの気弱さは微塵も感じられないほど、しっかりした深みのある声に変わっている。
 ど、どういうこと?
 委員長は、委員長じゃないの!?
 混乱して訳が分からなくなっていた。

「せっかく紳士的に振る舞ってやったというのに。こうなったらお前にも協力してもらうぞ」

 まるで上に立つ人のような傲慢なものの言い方。
 急に変わってしまった、がり勉オタクの変貌振りにたじろぐ葉菜。委員長がポケットから何かを取り出しそれを口の中に放り込む。

「な、なに……」

 近づく端整な顔。

「い、いいんちょ……んんっ!?」

 逃げようにも逃げられない体勢で、迫る顔に抵抗も出来ないまま、葉菜の唇にその唇が重なった。驚いてされるがままの葉菜の唇を割って何かが入ってくる。
 丸い、小さな粒―――?
 薬みたいなものを口移しにされ、だめだと思いながらも思わずそれを飲み込んでしまった。

「な、なに?」

「眠り薬だ」

 すぐに強烈な眠気が葉菜を襲う。
 力を失った頭が床の上にことりと滑り落ちた。
< 5 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop