横顔の君
ふと見上げた青い空の向こう側に、過ぎ去った過去が映った。



両親の反対を押し切って、私は遠くの大学へ進んだ。
それは、本当につまらない理由からだった。



彼氏に振られた…
よりにもよって、友達に彼を盗られたのだ。



だから、逃げた…
彼にも友達にも会うことのない遠くの町へ…



見知らぬ土地での初めての一人暮らし。
寂しさや心細さにもようやく慣れ、あと、数か月で大学を卒業するといった頃、父親が急死した。
私は父の死に目にも間に合わなかった。
くだらない理由で家を離れ、親孝行の真似事さえ出来ないうちに父を亡くしたショックはとてつもなく大きかった。



大学を卒業したら戻っておいでと言う母の言葉にも、私は素直になれなかった。
申し訳なくて…ふがいない自分自身が許せなくて、帰りたいけど帰れなかった。
だけど、就職もうまくいかず、バイトを続けながら、一日一日を綱渡りみたいにしてどうにか暮らした。
やがて、二年弱の年月が経って、私はようやくある会社に就職した。
父に何も出来なかった分、せめて母親にはなにかしたいと考えて、ただひたすらに仕事に打ち込んだ。
そうすることをまるで贖罪みたいに考えて、遊びにも行かず、欲しいものも買わず、出来るだけ節約して、母にお金を送り続けた。
これといって、楽しみの無い生活ではあったけど、そんなことも当時は少しも苦にならなかった。

ところが、そんな私は職場でも浮いた存在で、ある時からいじめのような仕打ちを受けるようになった。
最初は気にしていなかったのだけど、そのうちにいじめはエスカレートして…



結局、私はまた逃げた。
ちょうど、妹が結婚して家を出ることになったのを良いことに、母を一人にするのは心配だからというもっともらしい理由をつけて、私は家に戻った。
私はずるい…自分でもいやになるほど身勝手だ。
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