横顔の君




「このジャケットなんてどうですか?」

「あぁ、良いかんじですね。」

「それじゃあ……」

私は目に付いたグレーのジャケットに似合うシャツを探した。



「中にこの色味の少し違うグレーのシャツを着て、それと…
このネイビーのチノパンなんてどうでしょう?」

「一度、着てみます。」

照之さんは、私が選んだももの持ってフィッティングルームへ消えて行った。



(あ……)



気付いたら、お値段はけっこう良い。
全部で5万円を少し超えるから、これはちょっと高かったかなと反省した。



「吉村さん…」

おずおずと…どこか照れくさそうに出て来た照之さんは、さっきまでとは一変。
昭和な香りはどこへやら…とても、今風の人に見えた。



「隠岐さん…すごく素敵です!」

「本当ですか?」

扉を開け、鏡の前で改めてそのコーディネイトを確かめながら、照之さんは嬉しそうに微笑んだ。



「とても似あってらっしゃいますよ。
サイズもあつらえたみたいにぴったりですね。」

「ありがとう、吉村さん。
じゃあ、これを買います。」

「あ……」

それはけっこう高いですよって言いかけたけど、もしそう思われたらやめられるだろうし…
私はレジから少し離れたところで、照之さんを待っていた。



「お待たせしました。」

照之さんの腕には大きな紙袋…
やっぱりあの三点を買われたんだ。



「いえ…」

「吉村さん、申し訳ないんですが、また別の店で違う雰囲気のものをもういくつかコーディネイトしていただけますか?」

「え?そ、そうなんですか?」



幸い、あたりにはまだいろんな雰囲気のメンズショップがあったから、照之さんの趣味に合う、あまりラフな感じではないお店に入って、また少し違う感じのものを探した。



「隠岐さん…デニムはあんまりお好きじゃないと思いますが、黒だったらどうですか?」

「あぁ、黒ならそんなに違和感ありません。」

「だったら…この黒デニムに…
このシャツなんかどうでしょう?」

「わ、なんだかおしゃれなシャツですね。
僕に着こなせるでしょうか?」

「大丈夫ですよ。
あ、このジレなんか羽織っても格好良いかも…」

なんだかすごく楽しかった。
まるで、彼氏の服を選んでるみたいな気分になって…
照之さんは、元々の素材が良いから、どんな服も着こなしてくれて…
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