横顔の君




(あ……)



仕事が終わって、携帯を見たら、照之さんからの留守電メッセージが入っていた。
時間があったら、店に寄って下さいと。



なんだったんだろうと気になりながら、私は、会社帰りに鏡花堂に立ち寄った。



「あ、吉村さん…!」

「隠岐さん、お電話どうもありがとうございました。
あの…何かあったんですか?」

「あぁ、たいしたことじゃないんですが…」

そう言いながら、照之さんが差し出したのは、一冊の文庫本…
カバーがかかってるので何の本なのかはわからなかった。



「これは?」

照之さんはそれには答えず、ただ静かに微笑む。



「あっ…」

ぱらりと本を開いて、それがなにかを知った。



「見つけて下さったんですか?」

「今日、買い物のついでに本屋に寄ったんです。
そしたら、あったので…」

「あ、ありがとうございます!」

それは、昨日一巻だけ抜けていたファンタジー小説だった。
照之さんの心遣いにまたじわっと来てしまった。
お代もいらないって言って受け取ってもらえなかった。
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