横顔の君




(やっぱり変……)



夜も更けて、自分の部屋で横になっても、目が冴えて少しも眠れない。
目を閉じても、開けていても、テレビを見ていても、あの人のことが頭に浮かぶ…
真剣に本を読むあの横顔が……



(……どうして?)



どんなに考えてもわからない。
なぜ、こんなにも気になってしまうのか…



そういえば、あの人は一体誰なんだろう?
以前いたおじさんじゃないことは確かだ。
ってことは、息子さん…?
そんなに似てるような感じはしないけど、でも、本を読むあの眼差しは似てるような気もする。
年は私より少し上か…
だとしたら……きっと、あの人はもう結婚してる…



そんなことを考えたら、急に恥ずかしくなって来た。
あの人が結婚してるかどうかなんて私には関係ないことなのに、私ったら、何を考えているんだろう?
初めて会って…いや、あれは会ったなんてもんじゃない。
ただ、私が一方的に見ただけ。
そして、それだけで好きになって、さらに結婚してるかどうかを考えるなんて…



やっぱりどうかしてる。
今日日の中学生だって、そんな恋はしない。



しっかりしなきゃ…
きっと、あのアンティークな古本屋さんの雰囲気が悪いんだ。
あの独特な雰囲気のせいで、ちょっと感覚が狂ってるだけ…



私はそんな風に理由を付けて、眠れない瞳を無理矢理に閉じた。
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