姉の思い出 短編集
そんな司は、なぜかあたしにだけ甘い顔を見せる。
成長して丸みを帯びて女性らしくなったとはいえ、天使をいつも身近に見てきた自分からしても、あまり女子力のない自分を司は女神かなにかのように扱う。
ほんの散歩で拉致られそうになる自分の過去から、あたしが独りて出歩くことをよしとしない。
「約束して。そばにいなかったら結香を守ることだって出来ないんだよ? 」
司とは違うから、そんなことはない
そう喉まで出掛かって飲み込んだ。
言ったことがあるのだ。しかしその言葉を撤回するまでにどれだけ結香がかわいいのか言葉を尽くして語り聞かされ、その口からこぼれる言葉に砂を吐く思いで耐えた。
まるで自分のこととは思えないその数々のエピソードに、どれだけ厚いフィルターがかかっているのかと頭を抱えた。
ああ、これは憧れに似ている。
泣いている司を隠すように背中に庇い、自分よりも大きなお姉様と対峙するのを見ていた司は、自分だけのヒーローを手に入れたのだ。