音ちゃんにお任せ



いつもなら、「ただいまー!」って明るく言うはずの結斗くんは黙ったままリビングの扉のところで立ち止まってしまっています。




「あの、結斗くん?」

「ごめん、ほっといて・・・」





結斗くんはそう言って、私を通り過ぎて行こうとします。
ほっといて・・・。
そんな、辛そうな顔をしている結斗くんを?


放っておけというのですか?




「待って、結斗くん・・・っ、なにが・・・」





慌てて掴んだ腕。
その腕を引かれ引っ張られるように前かがみになった私は、いつの間にか結斗くんの腕の中。





「ゆ、結斗く・・・」

「ごめ・・・、顔、見られたくないから・・・っ」




そう言った結斗くんの声はひどく震えていました。
私を抱き締めるその体もまた、震えて・・・。



泣いている・・・・?




いつも明るく、笑っている結斗くんしか知りませんでした。
そんな結斗くんが傷ついて、泣いている・・・。




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