レインボウ☆アイズ
保健室に行くと、祐子さんが待ち構えていた。
「どうだった?咲葉ちゃんにメールした?」
「うん。土曜日には一緒にラーメン食べた。」
かばんを置いて、誇らしげに俺は言った。
「…すごいじゃなーい、敦哉。」
『奇跡だわー』
ものすごく驚いた顔で、祐子さんは言った。
「咲葉さん、お酒が好きなんだって。そのおかげで、仲良くなれた。」
「へえー。よかったわねえ。」
「うん…でも…。」
椅子に座って俺が言うと
「なに?」
『どうせ贅沢な悩みなんでしょ。デートまでしといて』
不機嫌な顔と声で、祐子さんは答えた。
さすが俺の叔母さん。完全にバレてる。
「もっと近づくには、本当のこと言わないといけないな、と思って。」
思わず目をそらしながら、俺は答える。
「まあ、そうねー…。言ってみれば?」
祐子さんは簡単なことのように言った。他人事だと思って…。
「絶対に嫌われるよ。気持ち悪いもん。」
「そうかしら。」
『言わなくてもわかるから便利だけど』
「そんなふうに思うの、祐子さんくらいだよ。」
心の中でも言いたいこと言う人は、本当に祐子さんしかいない。
両親も使用人も、みんなちゃんと使い分けている気がする。
「でも敦哉の家の人たちは、みんな敦哉のことが好きでしょ?
 そんなに恐れなくても、いいと思うけど。」
「うん…。でもそれは、俺がかわいそうだからでしょ…。
 小さい頃から見てるし…。仕事だし。」
「それだけじゃ、やっていけないわよ。和成君だって、ずっと友達じゃない。」
「和成は自分が見捨てたら終わりだって、わかってるからいてくれるんだよ。
 あと、修がすごいから。和成、修みたいになりたいって言ってたもん。」
頬杖をついて言う俺に、裕子さんは言った。
「そう…。」
『ひねくれ癖は中学の時のままね…』
「敦哉はすごく成長したと思うけどね。
 …それに、だめだったとしても、受け止められる気がするけど。」
祐子さんは立ち上がって、薬剤の整理を始める。
そうかなあ。死んじゃいそうな気がするよ…。
「でも、そこまで仲良くなりたい子ができたことが、すごいわよね。
 …まだのんびりウジウジしてれば?すでにがんばったんだから。」
何だか褒められてるのか、けなされてるのか、わからない…。
でも中学の頃の俺が、今のことを知ったら、卒倒するだろうな。
他人と仲良くなるなんて、絶対に無理だって思ってた。
俺の本当のことを知らない人には、近づきたくないって思ってたのに。
確かにちょっとは、成長してるのかもしれない。
…でも、咲葉さんに嫌われたら立ち直れる気はしない。
だって、今日も幸せだったもん…。咲葉さんの寝顔を思い出す。
また咲葉さんに会いたくなってきた。
今日の昼休みもメールを書こう。何を書こうかな。
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