美男子の恋事情!

今日は朝練がなく、いつもより長い時間ここで空を眺めていた。


ここに来ると、相変わらず感傷に浸ってしまう俺。


俺がここに来るようになったのは、麻里香が亡くなってからだ。


式の予定だった土曜日に事故に遭い、休みが明けて週の半ばにはお通夜、告別式を終えた。


学校に復帰したのは事故から十日後。


職員室にいると、憐れみの眼差しや必要以上に気を遣われて職員室に居辛くなった。


そんな俺は滅多に誰も近付かない教科準備室に逃げ込み、ここの景色を発見したというわけだ。


たまたま朝練の前にここから外を眺めると朝日が街を輝かせていて、純粋に綺麗だと思った。


麻里香が亡くなった当日、霊安室で少し泣いたようだけどあまり覚えていない。


それから不思議と涙は出なかった。


中止になった結婚式の対応、葬式の準備、その他の手続きや挨拶など、何かを考える暇もないぐらい忙しかった。


冷めてるって思うだろうけど、そうじゃない。麻里香の死を受け入れられなかったんだ。忙しいぐらいが丁度良かった。



だけど、事故から数日が経ち、久しぶりにぼーっとした時間を過ごしていると。



麻里香の声が聞こえない。


麻里香の愛らしい笑顔が見れない。



……姿が、ない。




初めてこの朝日と輝く景色を見て、俺は
実感した。


もう、麻里香がいないということ。



徐々に校内が騒がしくなる。


ここは学校の端っこで、しかも特別棟。授業がない限り殆ど生徒は来ない。


今だけ……泣いてもいいだろうか……


『ゔ……っ、』



俺はこの日、一生分の涙を流した。


朝日に包まれながら。




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