美男子の恋事情!

俺はふぅ、と息を吐いて窓を閉めると、教科準備室のドアを開けた。



「大ちゃん!遅い!」



そこには頬を膨らませて腕を組んだ春香が仁王立ちしていて、俺は目を見張った。


あれこれ考えてた自分がアホみたいだ。
いつもと何ら変わらない春香の姿に、何だか胸の奥の方が温かくなって思わず、ふ、と笑ってしまう。



「悪い。ちょっと急用で出てた」


「急用?さっきの電話の時、拓真がいたみたいだけど…もう用事終わったの?」


「終わったよ。あとは明日で問題ない」



春香には口が裂けても拓真に嵌められて、三十間近のおっさんが駅まで全力疾走したなんて言えない。


あー、くそ。思い出しただけでもむかつくな。
絶対明日、百五十周走らせるの決定。


春香は「ふ〜ん」と特に気にしてなさそうに相槌を打った。



教科準備室のやや開いた窓から微風が入り、春香の髪を揺らす。


その時の髪を耳に掛ける仕草と表情がやけに大人っぽく……いや、色っぽく見えて、俺の胸は跳ね上がった。





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