ほたるの初恋、消えた記憶

緑が丘学園の卒業式

部屋に母さんがドタドタ入って来た。


頭痛いのにな。


「いつまで寝てるつもりなの。今日は卒業式だと言うのに、あんたって子は。」


朝からそんな大きな声出さないでよ。


「母さん、祐吾は?」


祐吾は父親に勘当されて、うちに下宿してる。


住み込みで働けば下宿代も食事代もいらないと、父さんが言ってくれたのだ。


祐吾といつも一緒だから、もっと楽しい生活がおくれると思ったのは大きな間違いだった。


祐吾は規則正しい生活を望むが、私は本当にいい加減な性格で早寝早起きは苦手。


最初の頃、朝起きの私の顔を見て、祐吾は悲鳴をあげた。


「ほたるが別人に見えた。」


毎朝早く起こしに来るし、お風呂入らず寝ると、たたき起こされシャワーを浴びせられるし。


顔を洗いなさい。


歯磨きしなさい。


ヨレヨレの服は着ない。


ぼさぼさ髪のままだと叱られるし。


あれ、今日は母さんが起こしに来たけど、祐吾はどうしたのだろ。


「祐吾は?」


「はりきって朝食の準備してるよ。」


祐吾のこだわりは半端なくて、味噌汁作りも手を抜かない。


ばあちゃんに味噌の作り方まで教わり、何でも自家製なんだ。


私には真似できない。


祐吾は良い奥さんになれるよといってしまいそうだ。





















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