ほたるの初恋、消えた記憶
青木さんに腕を引かれ車に乗るように言われた。


何から聞いて良いのか分からない。


「祐吾様はいえ、祐吾は必ず帰って来ますから、信じて待っていてください。」


祐吾は何をしに東京へ帰ったのか。


祐吾が抱えている問題はなんなの。


聞きたいのに上手く言葉が出て来ない。


「青木さんは10年前の事を覚えていますか。10年前の雨の日に今日と同じように、祐吾を訪ねたんですよね。」


10年前の雨の日に私が祐吾を訪ねたと、祐吾の父親が言った。


「私には10年前の記憶がないんです。何も覚えていません。」


私から話す事は何もないと、青木さんが言った。


青木さんも美幸も健人も絶対10年前の事を知ってる。


どうして私に隠すのか分からない。


何があったの。


思い出せないけど、思い出さなきゃ。


その日何年ぶりの高熱にうなされた。


夢を見た。


祐吾を訪ねてお屋敷に行くと、祐吾はいなくて必死に追いかけた?


美幸の自転車を借りて後を追い車にはねられたの?


やっぱり分からない。


祐吾に会いたいよ。


会いたくてたまらない。

















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