気づかないままに
甘い夜
「…なに?感じてんの、おまえ」
薄く柔らかい唇は、艷やかに今夜も笑う。
「ちがうっ…そんなんじゃ」
「言えよ。俺のこと。好きって」
間違いだらけ、後悔だらけ。力の抜けたその甘い声はどこか遠くに聞こえ、あたしをただ迷わす。
「…ごめんね」
愛してるの。
だからせめて、気づかないままに。
終わらせないで。永遠に、心地良いぬくもりのなかにいたいだけ。あなたの腕に、ただ身をゆだねて甘えていたいだけ。