二百文字小説【小さな玉手箱】
《11.親の役目》

 困った。妻に頼まれはしたものの初めての経験だ。どうしたらいいんだ。

 お願いだから暴れないでくれよ。湯の温度は大丈夫かな。

 こんなことなら勉強しておくんだった。親父はどうしていたのだろう。

 想像すると笑ってしまいそうだ。

 慎重に。けれどどこから手をつけていいのかわからない。

 いつまでも手を動かせない俺に見かねたのか、妻が浴場の扉を開けて言った。

「もう、困ったお父さんね。風邪ひいちゃうから私と代わって見ていて」
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