二百文字小説【小さな玉手箱】
《16.御利益》

 塾帰りに突然の雨に遭った。

 いつもは汚いと思って避けている路地裏を近道に使う。

 不意に扉が開いて男の子が出てきた。

「お前、帰りなの?」

 割烹着姿の級友だ。

 家が食堂だとは知っていたけど、逢ったのはすごい偶然。

 手伝いの最中みたい。

「傘貸すから待ってて」

 油がはねる音が奥から聞こえる。

 勉強に手伝いか。彼も頑張っているんだ。

 明日は傘を返す口実で寄らせてもらおう。

 彼のお店のトンカツは、きっと御利益がありそうだから。
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