二百文字小説【小さな玉手箱】
《32.誰のために》

 子供が生まれるので禁煙を決めた。

 男としてではなく親になることのけじめだ。

 しかし辛い。最後の一本と考えて、つい吸ってしまう。

 午後は妻を気遣って喫茶店に行った。

「全席禁煙なのですが、よろしいでしょうか」

 喫煙席がないならやめようと思ったが、貼ってあるポスターに気づいた。

『健康のため、禁煙しましょう』

 俺は子供のためだよと考えて思い直す。

 いや、俺と家族の未来のためじゃないか。

 お願いしますと気持ちよく言えた。
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