二百文字小説【小さな玉手箱】
《35.命起つ》

 今年入って初めての徹夜作業に全員が緊張してあたる。

「逆子か。破水して時間はどれくらいだ」

 恐れていた事態が起きた。初産を迎えた馬が危ない。

 せめて母体は助かってほしい。

 すると出ている足が動いた。仔馬は諦めていない。

「生きようとしています。出してやりましょう」

 足を持って引っ張ると、応えるように母馬がいなないた。

 同時に仔馬が出た。弱いが息をしている。

 朝日を受けながら乳を飲む仔馬を見て全員から笑みが漏れた。
< 35 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop