二百文字小説【小さな玉手箱】
《40.同じ時と歩み》

 夕刻をしらせる音楽が流れる。

 反響が犬の遠吠えに聞こえるのだろうか。我が家の犬が追うように細い声で鳴く。

「散歩に行こうか」

 夫が他界して五年経つ。私も愛犬も年をとった。

 散歩のはやさも一緒。そう考えると、同じ時を歩んできたと思う。

「お互い長生きしようね」

 犬の寿命は人より短い。だから、この子の面倒は最期まで見てあげないと。

 頭を撫でると温かい舌で応えてくれる。

 お互い長生きしようね。愛犬もそう答えた気がした。
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