二百文字小説【小さな玉手箱】
《58.働く誇り》

「鮮魚売り場の人、今日で定年退職みたいよ」

 職場仲間の一言で、きさくな男性を思い出す。

 新鮮な魚の見分け方を教えてもらったっけ。

「お祝いどうしよう」

「私も悩んだの。とにかく探そう」

 急いで店内を歩いてお祝い品を買う。

 渡しに行くと彼の手には店の商品が大量にあった。

「すみません。急に聞いたのでこんなもので」

「店員なんだから、こんなものは駄目だよ」

 あ、そうかと納得する。

 彼に最後まで働く誇りを教わった気がした。
< 58 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop