二百文字小説【小さな玉手箱】
《62.アイリッシュコーヒー》

 小さい頃、コーヒーの香りに誘われて起きた覚えがある。

 目を擦りながら食卓に行くと、父と母が飲み物を手にしていた。

「アイリッシュコーヒーだ。お酒だから子供は飲めないぞ」

 そう言われたので我慢した。料理ができない父の自信作だった。

 そして今日、成人式を迎えた俺は自分でつくったものを母と飲む。

「お父さんが入れてくれるのと味が似ているかも」

「そうなの? 適当に入れたんだけど」

 海外出張中の父も飲んでいる頃だろうな。
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