二百文字小説【小さな玉手箱】
《79.空耳》

 長年、共に過ごした愛犬が他界した。

 最後は食事もできない状態で、その日の深夜に眠るように息を引き取った。

 そして、ペットロス症候群になった私は、空耳を聞くようになった。

 犬の爪が床を叩く音。餌をねだる鼻声。

 そんな日々が続いた夜に夢を見た。

 愛犬が私にすり寄ってくる夢だ。奇しくも四十九日だった。

 その日から空耳がなくなった。

 愛犬が夢枕に立ったと感じたのは思いこみだろうか。

 納骨するとともに頑張ろうと唇を噛んだ。
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