愛、罠、キス。
第一章
気になる視線
暖かな季節が終わり、ジリジリと焼き付くような夏が始まった。
今日から7月。
だと言うのに……
「なぁ、こっち来いよ」
「やっ…」
新月早々。
男に迫られているあたし、椿 彩葉(ツバキ イロハ)。
「何で逃げんの?」
近付いてくるその影から逃れようと後退りする。
が、背中が壁に当たった時、逃げ道がない事を知った。
「残念だったね。」
ふっ、と意地悪に微笑んで。
あたしのすぐ傍までやって来ると、細長い指であたしの髪に触れた。