契約結婚の終わらせかた
退院は迎えに来ると伊織さんは言ってたけれど、その前にと私はおはる屋へ帰った。おばあちゃんに離婚のことを伝えようとしたけど、伊織さんから何かを聞いてたのかおばあちゃんに追い出された。
「ちゃんと互いに納得するまで話し合ってから帰ってきな。それまでここの敷居は跨がせないよ」
って。
おばあちゃんは頑固者だから、一度そうと決めたらテコでも動かない。
他に行き先がない私は、仕方なく迎えに来た伊織さんとマンションへ帰ったけど。
あれ以来、何だか伊織さんが……じっと私を見てるというか。監視されてる気がする。
太郎と花子を愛でる習慣は変わらないし、ダイニングテーブルでミクに占領されるのも以前と同じ。
退院したのが3日前で、それから離婚を切り出すと徹底してスルーされる。
せめて年を越す前に話を着けようと離婚届をダイニングテーブルに置いて、決死の覚悟で話し合いをしようと挑んだのだけど。
帰ってきた伊織さんに「これ」と渡されたのが、年越しそばとお雑煮の材料。 こんなもので誤魔化されません! と言えば、「腹が減った」と言うから仕方なく年越しそばを作った。
彼が食べられるように丁寧にだしを取ってたら時間が掛かって。年越し前に慌てていただくと、伊織さんは「眠い」とそのまま寝てた。
で、せっかくだからとお雑煮を作ってみれば。朝になって起き出した伊織さんは、ダシとお餅だけのお雑煮を食べて。
今現在に至ります。