契約結婚の終わらせかた
「ん、まぁ……上気道炎……いわゆる風邪でしょう。3日分のお薬と咳止めの処方を出しますね」
ずいぶんとお年をめした(おばあちゃんより年上っぽい)おじいちゃん医師は、おばあちゃんをそう診断した。
「そら、大したことないだろ。あんたが騒ぎすぎるんだよ」
おばあちゃんはそら見ろ! と言わんばかりに鼻を鳴らしてた。
おばあちゃんの咳が尋常な様子でなくて、心配になった私は伊織さんに頼んで休日でも開いてる診療所におばあちゃんを連れてきた。
で。おじいちゃん先生はあっさりと風邪だと診断したけど。
私はおばあちゃんの車椅子を押しながら、どこか納得できなくて首を捻る。
すると、伊織さんがおばあちゃんにこう言った。
「別の病院できちんとした検査を受けてはいかがですか? あの医者はレントゲンも撮らずに診断しましたから、あまり信用なりません」
伊織さんの言葉に、そうだ! と私も納得した。
あのお医者さんは喉を診て体に聴診器を当てただけで、他にろくな検査もせずあっさり診断したんだ。
「そうだよ、おばあちゃん。伊織さんの言う通り。ちゃんとした病院に掛かった方がいいって。年なんだし」
「うるさいよ!」
ピシャリ、とおばあちゃんは私たちの口を塞がせた。
「自分の体は自分が一番よく解ってると言っただろう。わいのわいの言われるのは嫌いなんだ。放っといてくれ」
それからはどんなに宥めすかしても、おばあちゃんはムスッと黙ったままで。仕方なくおはる屋に送り届けた。