契約結婚の終わらせかた
そんな私の思惑を話すつもりはない。それこそ押し付けがましくなる。
“あなたのためを思って作ったんだから、食べてくれて当たり前でしょう”だなんて。
私は、あくまでも伊織さんの選択に委ねるつもりでいた。
野菜プリンを食べないというなら、それでいい。
ただし、プリンはもう二度と作らない――と。
プリンが大好きな伊織さんからすれば、相当な理不尽に違いない。疲れて仕事から帰ってみれば、赤の他人からこんな意地悪をされて。
でも……でも!
ほんのちょっとでも、私と暮らしていてよかったと思うなら。せめて一口だけでも野菜プリンを食べて欲しかった。
「……これ食べなければ、二度と作るつもりはない、と?」
地を這うような伊織さんの声は、苛立ちが最高潮に達しているからか逆に冷静に聞こえた。
足元からひんやりしたものが伝染し、膝が震えて冷や汗が背中を伝い落ちる。狩人のような底光りする瞳に射竦められて、心臓が縮んだ。
だけど、勇気を振り絞って彼の鋭い視線を見返すと、ゆっくりと口を開いた。